2016年3月21日月曜日

何を教わるかでなく、何を学ぶか。

毎年、2月、3月になると、教育関係の連絡が増えます。
前年から詰めてきたカリキュラムが最終決定する頃で
年間スケジュールの調整と、学校案内も制作開始となる時期です。

僕は杉野服飾大学という目黒にある服飾大学(昼間)と
エスモードという恵比寿にある専門学校(夜間)にダブルスクールしていたので
3年ほど前から、この2校の卒業生紹介に載せていただいているので
毎年、OBとしてのコメントを送ったりインタビューに来ていただいています。

事業がこけて業界から姿を消したり、掲載するキャッチーさがなくなると
こういうインタビューもなくなるんだろうなぁと思います。



セコリ荘金沢が金沢文化服装学院(通称 : カナブン)との出逢い、ご協力のもと
昨年オープンしたこともあり、金沢店の下山と一緒にカナブンの授業を担当させてもらいます。
北陸産地の企業さん、カナブンの学生さんと一緒に商品企画をしていきます。
産地に近い服飾学校の強みは間違いなくここにあって、東京では実現が難しいことです。
感性の鍛錬だけでなく、1年かけて企業の持つ特徴を理解したうえで工場と一緒にものづくりをする方法、
工場に拠点が近いことの利点を体感してもらいます。

今年からは、尾州・有松産地と距離の近い、名古屋芸術大学でも客員教授として呼んでいただき、定期的に通うことになりました。
こちらはまたの機会に詳細を書こうと思います。

こういう授業担当のお話はこれまでも何度かあったのですが、お断りしてきました。
"僕が学生さんに教えるなんてまだまだ早い、教えられることなんてない。"というのが大きな理由で、
同時に"僕だけができることではない、自身の事業に注力すべき。"という考えがありました。

僕らが進める「Secori Gallery」は、全国のものづくり現場を訪れて、魅力や技術をどんどん発掘発信して、国内外の相性の良いブランドさんにどんどんマッチングして(ブランドさんを工場さんにマッチングして)、ものづくりの創出、活性、発展に繋げること。そして、紙や空間やウェブを通じて、文脈や背景に共感してもらう層を増やしていくこと。が大きなミッションと言えます。各現場と東京を行き来していると本当にやれることは山ほどあります。毎年チャレンジの連続です。2012 年から事業をスタートして、いまだ小規模で社会的インパクトも持ち合わせず、国内の繊維企業は年々高齢化していき、後継者問題もあり可能性と同じくらい課題もあり、新しい動きも多発している、そんな中で優先順位がある、という考えを持ってきました。

産地に近い学校だからできることを書きましたが、そこに、僕らにしかできないこといまやるべきことが重なったこともあり
今年は責任をもって授業を担当することにしました。そんな背景もあり、OBとしてのコメントやインタビューに加え、
これまでの特別授業やセコリ荘での学生さんとの接点、年間で授業を担当することになり、改めて教育について考えてみました。

「学校が学生に与えられること」って語り切れるくらい、与えられないことの方が多いと思います。
これは僕が学生時代からわかっていたので、現役の学生さんも教員の皆さんもわかっていることだと思います。
単純な知識や技術だったら時間とお金をかけて全日にいく必要はないですよね。
オンラインや短期講座もあるし、現場でも学べます。かといって"コミュニケーション力を養う"とかそういうことでもないです。
欧米教育を例に挙げたくはないですが、僕が通っていたLCFは入り口のレクチャーと出口のフィードバックだけはしっかりあって、
あとは個々の感性と努力でした。それで同期のみんなや先輩後輩は業界でしっかり活躍しています。
先生も間違うことは多々あるし、現場自体を離れてる人もいるし、現場にいるけどこれから業界を目指す若者達にベストマッチとなる経験をリアルタイムで更新できていない方々もいるので、どう考えても"教えてもらおう"という受け身は根本的に間違えていると思います。

理想は、これから何がしたいか、何を学びたいか、具体的にどんなスキルを磨きたいか、を日々突き詰めて
学校や教員をとことん利用して自分で環境を整えて、設定した期間で設定した目標を超えていくことだと思います。
産業が多様化して、次の時代に必要なスキルも更新の連続なので、当然教育も更新が必要で、フォーマット対応が不可能です。
これに対して教える側ができることは、学校が求める最低限の任務を果たしてうえで、学生ひとりひとりの課題や目標に必要な距離感(近すぎないという意味)で一緒に考える個人コンサルやメンターのような役割を担い、
そして、学生のやる気に火をつけることに尽きると思っています。

高校卒業時で指針が定まらないから、進学しているというのもあると思いますが、
だからこそ早いうちに受け身からの転回が重要だと思います。

学校全体してはもっとカラーをつけて学生の為にも、学校という箱自体をデザインする必要もあるのかなと思います。それが難しいのは良くわかっていますが。

普段仕事の中でもよく思うのは、好きなことを本気でやってる人は最強ということです。
お金の為とか、嫌々やってる人ってやっぱり全然魅力的じゃないし仕事の質も低いし、すぐにバレます。
学生ひとりひとり好きなことは違うし、好きなことってそんなに早く見つからないかもしれないけど
できるだけ早く発見して、やる気に火をつけて、トライ&エラーを繰り返して、壁にぶつかった時にはそっと見守り、必要ならフォローして、そしてどんどん伸ばしていき、卒業して仕事に就いたあとも先生でいられる、みないなことができる人が良い先生なんだなぁ、ざっくりですが、思ったことです。

超当たり前なことを書いてしまいましたが、おもいを込めてブログに残しておきます。